下切の屋形 修理現場
修理現場の見学
今年は感染症拡大防止の観点から、大規模な見学ツアーは開催できませんので、都度現場に足を運んだメンバーが写真を撮り、こちらにて報告させていただきます。
実際には、日付と工程が前後する部分があります。分かりやすさ重視で、工程順にご説明いたします。
第一期
日時 令和2年5月~令和3年3月
場所 朝倉堂(半田市亀崎町)
第二期
日時 令和3年5月~令和4年3月
場所 朝倉堂(半田市亀崎町)
1. 分解
細かな修理に入るため、まず分解です。
中心のせり上げ装置で上下する社の部分が取り外され、屋根1段ずつに分解されています。
2. 分解
社がさらに分解され、細かな彫刻が取り外されていきます。
写真は彫刻の一部です。棚の上に彫刻が所狭しと並んでいます。
こちらは天井の「麻模様の地紋彫り」です。
麻の紋には、活力ある生命の意味があって、子どもの着物に多い柄だそうです。某漫画の竹をくわえている女の子の着物も、麻の紋ですね。
3. せり上げの修理
ここで少し業種が変わり、大工仕事の紹介になります。
緒川地区の屋形は3台とも、屋根を上下に動かすことのできる装置となっています。
滑車を用いた木製のからくり装置でできています。
まさしく「縁の下の力持ち」
摺れて動く部分なので、普通に使っているだけで傷むのも早いです。家で言えば、戸の動きが悪くなったり、音がするようになったり…。
この屋形は二百年物です。
同じ地域で引き継がれていたとはいえ、「家主が次々に変わり、それぞれ工夫して住んできた家」のごとく、改造が繰り返されていました。
原型に近い形での復元が行われました。
4. 洗浄
さて、いよいよ装飾の修理です。
まずは長年染みついた汚れ、くすみを落とし、本来の状態がどうだったのか、調査しながら洗う、という作業になります。
欄間の鳥も輝いています。
手前にある花の赤がかなりきれいに出てきています。
獏の毛並みも、赤がしっかり彩色されていたことが明らかになってきました。
5. 部品の補填
長年使っていると、ちょっとした接着の具合や木材の劣化で部品がぽろっと取れてしまうことがあります。それが二百年も続くと、あちこちないところもあります。素人が触って、間違った場所にくっつけてしまうこともあります。
できるだけ元の形を創造しながら復元してゆく作業になります。この辺りが、歴史文化的な考察に加え、美術作品としてのバランスを正す、という高度な知識が必要な部分かと思われます。
6. 下地の塗りなおし
均一に美しい光沢を得るため、下地を仕上げます。
つまるところ一旦真っ黒になります。
7. 金箔押し
下地に金箔をはってゆきます。
8. 彩色
金箔の上から、絵の具を塗ってゆきます。
本来あるべき日本画の原則、こういった社寺建築の原則に照らして、復元されてゆきます。
今まで彩色の多くがこすれ落ち、また上に染み付いた汚れも多かったため、保存会もその美しさに驚いています。